野生の残り火抱いて 素足で走れば

肌に纏わりつくような暑さの中を

 

車の窓を全開にして走った 

 

空が青かった

 

海が青かった

 

それだけで十分だった

 

二度と戻らない あの夏の日々

 

 

 

 

 

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毎日が輝いていた。

 

学校へ行かず、仲間と集まっては

その辺で喋ったり、騒いだり

海沿いをドライブしたり

こんな日々がずっと続けばと願った。

 

好きな男―その時は彼氏だと思っていたが―

その彼が運転する助手席で

景色を眺めるのは最高の時間だった。 

 

どこへ行くでもなく

ただ車で遠くまで走るのが好きだった。

 

今でもそうだ。

目的地のないドライブは

まるで子供の頃の探検ごっこのように

大人になった私の心を躍らせてくれる。

 

茹だるような暑さも

じわりと熱を帯びた空気も

何もかも

夏の日はいつも

私を「17歳」へ連れ戻すのだ。

 

今でも鮮明に思い出せる。

空気も、風も、匂いも、熱も。

 

そんな夏を

一体どれだけの人が

体験できるだろう?

 

それから幾度となく

夏がやってきて

その度 私は

あの夏をなぞるように

焼けるような暑さの中を

窓を開けて海辺を走るのだ。

 

ハッピーエンドではなかったけれど

それでも私には愛おしい日々。

決して戻らない夏に

いつまでもいつまでも

恋焦がれてしまうのだ。

研がない強がり 嘘で塗り固めた部屋

叫びたい衝動を堪えて

 

平気な振りして過ごしている

 

本当は傷付いているのに

 

何でもないって顔を作る

 

 

 

 

 

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本音を言うのは嫌だった。

格好悪いことのように感じていた。

昔からそうだ。

 

思ったことも言いたいことも

頭の中で反芻してみて

こねくり回して綺麗に包んで

それから口に出す。

 

それは最早本音とは程遠いものだ。

 

 

 

 

20歳の時、18歳で付き合っていた彼と再会した。

私の成人式の日だった。

若い時代の2年という歳月はとても長く

友達としてやり直す準備には十分な期間だったようだ。

私たちは連絡先を交換し、今度遊ぼう、と笑い合った。

 

その日の夜、成人式の後で飲み会へ参加していた。

昼間再会したばかりの彼から連絡がきて

暇だと言うので飲み会に誘ったのだった。

 

 

それからは時々会って遊ぶようになり

向こうからまた付き合いたいと言われた。

丁度付き合っている相手もいなかったし

勝手がわかっている相手は楽だ。

2人とも少しは成長しただろうし

今度はうまくやれるだろうと思った。

 

 

初めのうちは楽しかった。

彼は優しい人であったし、

いつも好きだという気持ちを

ストレートに表現してくれた。

 

ただたまに連絡が取れないことがあったり

デート中、電話が掛かってくると

わざわざ離れて電話をすることがあった。

 

もしかしたら浮気しているのかもしれない。

そう思ったけれど私には何も出来なかった。

彼の私に対する優しい態度は変わらなかったし、

何より携帯を覗いたり、証拠を探したりという行為が

単純に浅ましいように感じて嫌だったのだ。

 

 

 

ある日 友人とカラオケに行く途中

立ち寄ったコンビニで彼と会った。

 

彼は女と来ていて

その女は親しげに彼の名前を呼んでいた。

彼は小さな子を抱いていた。

彼女の左手の薬指には指輪があった。

 

彼は確かに浮気をしていた。

ただ、その浮気相手は私の方だったのだ。

 

その場で問い詰めてやりたかった。

 

結婚しているなんて聞いていない

子供までいたなんて

これはどういうことだ

いつから結婚していたのか

最初からちょっと遊びのつもりだったのか

馬鹿にするな

過去にあんな事があったのに

アンタはまだ私を傷付けたいのか

 

そう怒鳴りたかった。

言いたい言葉は山ほどあった。

次から次へと頭に浮かんでくる

止めどもない言葉。

 

だけど私はそれをしなかった。

格好悪く惨めな姿を晒したくなかったからだ。

彼は私に気付くと心底驚いた顔をした。

私は彼に一瞥をくれ、コンビニを出た。

何でもない顔をして友人とカラオケへ行った。

 

“あとで会えない?”

彼から連絡が来ていた。

 

「今日は友達と遊んでるから明日ならいいよ」

いつも通りに返信をした。

まるで何も見てなどいないように。

 

その時の私の本音はこうだ。

 

騙されて不倫相手にさせられたのに

アンタだけ幸せに暮らすなんて絶対に許さない。

絶対にブチ壊してやる。

 

本当に、そう思った。

何事もなかったかのように会って、

言い訳を聞いて、許してあげて、

彼の家庭を壊してやろうと本気で考えた。

 

少したってまた彼に連絡した。

 

「やっぱ明日もムリ。二度と会わない。理由はわかるよね」

すぐに電話が掛かってきたが、無視をした。

メールにも返さなかった。

そうして私たちは また終わったのだった。

 

 

 

本当は言ってやりたかったことも

全部飲み込んだ。

一発くらい殴ってやりたかったけど

それもしなかった。

 

全部、自分を騙すためだ。

 

私は別に傷付いていないし

彼がいなくても平気で過ごせるし

縋り付いて引き留めるような相手でもない

 

 

本当は傷付いていたのに

惨めにならないよう

平気な振りをした。

格好悪い自分を晒さないよう

言い訳をして自分を騙した。

そうでもしなきゃ泣き出しそうだったからだ。

 

恋愛なんかに

二度と傷付くのは嫌だった。

 

どうしようもなく叫びたい衝動を堪えて

画面に流れていく歌詞だけを

ひたすら目で追っていくのだった。

誘惑 罠 全てが ぐるぐる回り続けてるんだ

 どんなカタチの恋愛でも

 

それはとても意味のあることだ

 

互いが互いだけを想う

 

それはとても美しいことだ

 

それが2人だけのものならば

 

 

 

 

 

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浮気や不倫をしていて
誰かにバレて面倒なことになった時
どこからバレた とか
誰々にしか話してないのに とか
疑ったり逆恨みをしたり

 

けれど
そもそも浮気や不倫をする方が悪いのでは?
そんな関係にならなければ面倒なことも起こらなかった筈だ。

それを棚に上げてどうして他人を責められるのだろう。

不倫をするような人間はやはりどこか常識から外れたところがある。

根源がどこにあるのか見えていないのだろう。

 

どんな事情があって浮気や不倫に走ったかは分からない。

 

夫や妻が自分を異性として見なくなったから とか
男として 女としての自信を取り戻したいから とか
寂しいから とか、単純に好きな人が出来た とか
色々あるのかもしれない。

 

だけど
それを浮気や不倫に直結させるのは違うのではないか。


異性として見られる努力はしたのだろうか?
自信を取り戻すのに浮気や不倫をする必要は本当にあるのだろうか?
寂しい思いをしたならパートナーを裏切ってもいいのだろうか?

 

彼氏・彼女に関してはこの際どうでもいい。

自由恋愛としてお互いで話し合うしかない。

問題なのはどちらかが既婚、もしくは どちらも既婚である場合だ。

 

頭の中のことはいい。

妄想も想像も個人の自由だからだ。

浮気をしてみたい、不倫をしてみたいと思うのは自由だ。

それを行動に移すかどうかが境界だ。

 

仮に夫婦間で話し合い、互いに自由にしようというなら

それは最早他人が口を出すことではない。

 

人に隠さなきゃならないような関係で

バレて困ることになるならば

初めからするな というだけの話だ。

 

なぜこんな話を書いたかというと

最近このような事に巻き込まれたからだ。

 

既婚と独身の不倫関係にある2人がいて

独身の方から突然

自分たちのことを誰かに話してないかと言われた。

話してないが何かあったのかと聞くと

言えないが面倒なことになっている、と。

関係はもう終わっている、と。

 

内容を言わないこと

関係は終わっていると言い訳することから察するに

完全に疑われている訳だが

そんなこと他人に話してどうなる?

誰と誰が不倫関係だ、なんて話 だから何?で終わる。

大体、他にも漏れるルートは幾らでもあると思うが。

それをイの一番に疑ってかかるのはあまりにも失礼では?

 

「自分はただ(既婚者の名前)のために言っただけだ」

 

よくもそう次から次へと都合のいい言葉が飛び出すと感心する。

その人のためを本当に思うなら、そもそも不倫関係になるなという話だ。

知ってる人間に口止めして回って 関係は終わってる、と触れ回って

思い切り保身に走っている人間がよく言えたな。とんだ偽善者だ。

結局は自分が巻き込まれるのが嫌なだけだろう。

 

 

その後 既婚の方からも連絡が来て謝られた。

独身の方が何か面倒な事を言ってきたのではないか、申し訳ない と。

面倒なこと云々に関しては 知人にカマをかけられただけだったようで

それを雑談として話したらこうなったそうだ。

既婚の当人は特に面倒なこととすら思っていないようだった。

 

自分の責任で始めたことで

他人に怒りをぶつける独身の方の気持ちは

私にはサッパリ分からないし分かってやろうとも思わない。

いい大人が自分の尻も拭えないで他人に迷惑をかける。

私はそれを許容してやるほど優しくはないのである。

友達ですらない人間に逆ギレされて不愉快でない人がいるだろうか?

 

ごめんなさい の一言も言えないというのなら

いっそのこと人生やり直してはどうか。

子供だって悪いことをしたら ごめんなさい だ。

 

今回のこれは久しぶりに腹が立った。

というか腹が立つどころの騒ぎじゃない。

最早、怒髪天を衝く勢いである。

たったこれだけのことで大袈裟な、と思うだろうか?

ところがたったこれだけのことではないのである。

独身の奴には前々から不愉快な点が多々あり

今回のことで堪忍袋の緒が切れた状態なのだ。

 

 

不倫は個人の責任でやりたきゃやればいいと思う。

知られた時のパートナーの気持ちを考え、真剣に想像した上で

それでもしたいなら好きにすればいいと思う。

周りに迷惑をかけないことを大前提として。

人に話したかったら話せばいいと思う。

もしそこから漏れたとしても責めないことを大前提として。

そして離婚・慰謝料と最悪のケースになった場合

それを甘んじて受ける覚悟を持った上で。

根本的に「不倫」は「不貞行為」。

それを頭に叩き込んだ上でやっていただきたい。

 

特に注意したいのは独身で不倫相手になる方。

不倫は簡単なものじゃない。

普通に彼女を作るのとは訳が違うし

ただ単にセフレという訳でもない。

相手にも寄るだろうが、恐らく

想像しているような関係にはならないだろう。

幸せな結末などまず訪れない。

よしんば相手が離婚して自分と再婚したとしても

また自分のような不倫相手が現れるのでは と不安が付きまとう。

 

ドラマや映画や小説の不倫が美しく描かれているからといって

現実がそれにリンクする可能性など無いに等しいのだ。

考えることを放棄して 脳死のような状態で

ただ欲望の赴くまま だなんて、ゾンビか何かか。

 

何を言ったって 何を言われたって

結局は自分の責任で、自分の決断だろう。

人の所為にして八つ当たりなんてお門違いだ。

恥を知れ。

非常口

 

毎日を君と過ごせること

 

それは奇跡のようなこと

 

とても 幸せなこと

 

だけどキミが

 

もっと僕を好きなら

 

もっと幸せなのに

 

 

 

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際限なく増え続けていく

 

この気持ちが

 

愛なのか 欲望なのか

 

全部あげたい と思う気持ちと

 

全部ほしい と思う気持ちが

 

混ざって絡まって

 

わからなくなる

 

僕らがもっと小さくて

 

幼い子供だったなら

 

一緒に遊ぶだけで幸せで

 

一緒に笑い合うだけで幸せで

 

何も知らないことと

 

純粋だということは

 

イコールではないけれど

 

純粋で何も知らない子供なら

 

感じる幸せだって大きいんだ

 

どうかな

 

そういう幸せと

 

今あるこの幸せと

 

どちらがより幸せかな

 

毎日そんなこと考えてる

 

大人になってしまった僕には

 

時々幸せが見えづらくなるから

 

そんな時は子供に戻ったつもりで

 

キミと遊ぶこと

 

笑うこと 手を繋ぐこと

 

想っては

 

手の中の幸せを

 

ちゃんと見つめるんだ

ハイファイ ローファイ 俺はそれを愛と呼ぶよ

誰にも言わなかった恋がある。

 

とても好きだったし

彼の幸せを純粋に願った。

隣にいるのが

私でなかったとしても。

 

 

 

 

 

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他の誰と付き合っていても

いつも彼を好きな気持ちはそこにあった。

彼を好きだということを
一度だって人には話さなかった。

その気持ちは私だけのものだからだ。


誰にも知られず
静かに好きでいたかったし
静かに終わらせようと思っていた。

 

彼と どうなりたいとか
こうしてほしい とか
そういうことではない。

ただ、笑っていてほしい。

幸せになってほしい。

傍にはいたいけれど

恋人としてじゃなくていい。

 

「恋人」の行きつく先は2つ。

「結婚」か「別れ」だ。

 

どんな道を辿っても、
いずれはそのどちらかを選ばなければならない。


そんな関係は嫌だった。

一番長く確実に彼の傍にいられる関係、
それは “良き友人であること”だった。

 

飄々として掴みどころがなく
それでいて優しく穏やかで
人当たりも良く、面白い人だった。

そんな人を好きにならない訳がない。

 

けれど誰かに言ってしまったら
きっと友人ではいられなくなると思った。

だから黙っていた。

 

彼女が出来ても笑って「おめでとう」と言った。
邪魔をしないように遊びに誘うことも控えた。
別れたと聞けば励まして元気づけた。
「また絶対いい人が見つかる、元気出せ」
本当に 心からそう思ったし、そう願った。


本当に 本当に 好きだった。

 

彼に恋人がいる時は遊ぶのを控えていた為
2年会わないなんてこともあった。
それでも久々に会うと
まるで昨日まで会っていたかのように
いつもと変わらず楽しくやれる。

 

そういう良い関係を築けていた。

 

 

ある時、彼が海外へ行くと言った。
料理修業のための留学だ。
イタリアへ最低2年だと。


不思議と寂しくはなかった。
そりゃ多少は寂しかったが
夢を真剣に追う彼は輝いていたし
そういう彼も好きだった。
2年会わないこともこれまであったし
何より彼が幸せでいることが大事だった。

 

頑張ってこいと笑顔で送った。

 

彼はそのままイタリアに住んでいるらしい。
去年、結婚したようだ。

 

 


純粋に相手の幸せを願ったり


絶対に嫌われたくなくて


絶対に壊したくなくて


大切に大切にガラス瓶に閉じ込めて


そして 大切に大切に眺めるのだ。

 

 

こんな恋を私は二度と出来ないだろう。

そして きっと

永遠に彼を好きでいるのだろう。

 

好きだから触れられず

触れられないから気持ちも消えない。

 

 

いつか彼に会うことがあったら
言ってみようか。

 

 

 

「本当はずっと好きだったんだ。」

セヴンスターの香り味わう如く季節を呼び起こす

 

恋と憧れと見栄

 

その区別を付けられないまま

 

「少女」の時代が過ぎる

 

そこには

 

幸せな恋など

 

用意されていないのだ

 

 

 

 

 

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16歳の秋
初めて出来た彼氏は
8つも年上のロクでもない男で
歌が下手なストリートミュージシャンだった。

 

“年上の彼氏がいる”ことは
私にとって自慢だった。
本当に恋をしていた訳ではない。
“年上のカレ”という憧れと
自慢したいという“見栄”
そして少しの“好き”という気持ち。
その程度だった。

 

24歳の彼は交通誘導のバイトをしていた。
当時は仕事をしている「大人」と思ったが
今考えると、いや考えなくても分かる、
まぁまぁなロクデナシだ。
やりたいことや夢を追っているが故のバイトでなく、
ただ何となく流れてきた先のバイトなのだ。

 

そんなどうしようもない彼でも
買い物に行ったり
ただその辺に座って話したり
彼の下手な歌を横で聞いたり
それなりに楽しくやれていた。

 

ただ16歳と24歳では
「恋愛」に対する感覚が
あまりにも違いすぎた。

 

16歳の私はセックスのセの字も知らず
キスもしたことがない子供だった。
見た目は大人っぽく思われていたが
中身は全く追い付いていない。
幾ら大人っぽく振舞っていても
大人の女と同じことなど出来はしない。

彼の求める関係と
私の求める関係のスピードが
全く噛み合っていなかった。

 

 


ある日
「部屋の掃除を手伝って」と言われ
彼の家に行った。
今なら使い古された誘い文句と分かる。
けれど当時はそんなことも知らず
本当に部屋の掃除をするつもりでいた。


家に入り少し話たところで押し倒された。

本当に驚いた時は声が出ないのだなと思った。
そして怖い時にも言葉は出ないのだと知った。

 

彼を押し退け鞄を引っ掴み
「じゃあね」と言って飛び出した。

 

自分の言った「じゃあね」が
ただの帰りの挨拶なのか
別れのつもりで言ったものか
自分でもよく分からなかった。

 

ひとつ分かったのは
私は彼を好きじゃなかったということだ。
全く好きじゃなかった訳じゃない。
ただ、“それほど”好きでもなかったのだ。
きっと彼の方だって同じだ。

 

私の気持ちを待てなかった彼も
許す気になれなかった私も
同じ程度の 好き だったのかもしれない。

 

 


気持ちで繋がれないのなら
身体だけ繋がっても意味がない。
怖い気持ちも確かにあったが
それよりも 何よりも
通り過ぎていくだけの男に
私に何も残らないような相手に
私の何一つもやりたくなかった。

 

初めの一歩を間違えたら
あとはもう転がり落ちるだけだ。
ロクデナシからロクデナシへと
人が変わっても中身は同じ。

 

身体だけなら楽だっただろうか。

 

人間が、血の詰まった ただの袋なら

 

気持ちが伴わず苦しむことも

 

涙を流すこともなかっただろうか。

 

 

 

17歳の時ほどではないが

 

未だにふとした瞬間に思い出す。

 

 

夜の入り口の空気と

 

まばらに点いたネオンの街を

 

泣きながら走った、青春を。

あんな傲慢な類の愛を押し付けたり

甘いシロップに漬かったチェリー

 

ずっと食べていられると思った

 

すぐに飽きて

 

気持ちが悪くなるとも知らず

 

手を伸ばし続けた 

 

 

 

 

 

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好きです と言って始まる

付き合いましょう と言って始まる

そういう普通の恋愛を知らなかった。

ちゃんと愛されている

大切に思われている

そういう実感を知らなかった。

私が好きなのは彼だけで

彼が好きなのも私だけ、

そういう当たり前の関係が

私にはとても特別に思えた。

 

17歳の頃にはなかった

好きな人からもらう「好き」という感情に

私は浮かれ、夢中で手を伸ばしたのだった。

 

私達は半分うまくいっていて

もう半分は最悪だった。

喧嘩をすれば互いを酷く傷付けた。

 

 

‟喧嘩するほど仲が良い”と言うが

その本当の意味はどうなのだろう。

 

喧嘩をするほど仲が深まっていくのか?

喧嘩が出来るほど本音を言える仲 なのか?

そもそも‟喧嘩”というものは

言葉や暴力による争いや諍い なのだ。

本当に本音を言うだけの言い合いなら

争いや諍いに当たるのだろうか。

喧嘩にならないのが一番良いのではないだろうか。

 

少なくとも私達は

‟喧嘩するほど仲が良い”とは言えなかった。

初めは気にならなかったことが

だんだんと気になり始める。

少しズレただけで苛々してしまう。

「分かり合うための喧嘩」のつもりが

「別れるための喧嘩」へ変わっていくのだ。

 

自分の傷にばかり目を向けて

相手の痛みには気が付かない。

そうして互いをどこまでも傷付ける。

 

相手を思い遣る余裕など持てなかった。

ただ愛されることだけが大事で

「彼女」であることを免罪符に

何をしても許して愛してほしいと

身勝手なことばかり考えていたのだ。

 

本物かどうか確かめる術を

永遠かどうか知る方法を

他に思いつかなかった。

時間をかけて見極めることも

その時間を待つことも出来なかった。

 

17歳の私を引きずったままの私の

彼でも他の誰でもない私だけの問題を

私は彼に押し付けていた。

そんな関係に耐えられる人などいない。

 

引き金さえ引けば

いつでも終わりになる

そういう危うい関係を

私自身が作り上げてしまった。

 

 

相手の全てを受け入れるなんて幻想だ。

どんなに好きな相手でも

パートナーでなく、家族であっても

どれだけ心を許した親友であっても

その全てを受け入れることは 出来ない。

その距離感を 私は掴めなかった。

 

たとえば私のこれまでのことを

身体を売っていたことや堕胎したことを

私は一生、夫には話すことは出来ない。

話せば私の気持ちは軽くなるかもしれない。

しかし その代わりに

私の軽くなった分の人生が

夫に重く圧し掛かることになるのだ。

そんな風に重荷を課すことを

「愛」とは呼ばない。

 

永遠でありたいからこそ

話せないことも確かにあると

私は そして 思うのだ。

 

 

彼とのことも

私が何もかも求め過ぎ、

何もかもを欲しがり、

1㎜のズレもない関係を求めなければ

きっと 少しは違っていた筈だ。

17歳の私が貰えなかった「愛」を

18歳の私の相手に求めるべきではなかった。

 

 

「愛」に擬態した「欲望」は

人の本質をも変えてしまうのだ。

ユートピア 丈夫なココロが欲しい 痛いのはもう嫌なんだ

 

どの道へ進んでも

 

最後は 行き止まり

 

そういう道を

 

私たちは歩いていたのだ

 

 

 

 

 

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身体を売り続けることを
認めてくれる優しさなど要らなかった。

そんな仕事はするな と
怒ってくれる優しさが欲しかった


17歳の私を傷付けた男の家に
私はまた転がり込んだ。
逃げ込んだと言うべきだろうか。
17歳の私を心に飼ったまま
それでもその男への恋心は無く
私に無関心なその男なら
きっと理由も聞かず
置いてくれるだろうと思った。

そう、思ったのだけれど
意外にも怒られたのだ。

 

身体を売る仕事をしていたこと
なぜそんなことになったのかも
微に入り細に亘り聞かれたのだ。

なぜコイツが怒るのだろう。
付き合ってもいない
酷い振り方をしたコイツがなぜ。
未だに「妹のように」思ってでもいるのだろうか。
本当に妹とでも思っていたのだろうか。

そういえば17歳の頃
コイツに言われたことがあった。


ガキのくせに
愛のないセックスばっかしてんじゃねーよ


それならアンタが教えてくれんのか。
喉まで出かかって飲み込んだ言葉だ。

 

「愛のないセックス」のうちの一員が
偉そうに怒っていることが 何だか可笑しかった。
可笑しかった筈なのに、涙が出た。
こんな何でもない奴が怒ってくれるのに
なぜ彼は怒ってくれなかったのだろう。

 

彼にとって私は
❝何でもない女❞だったのだろうか。

 

 


金が無いって言うから紹介してやったのに
逃がさないようにしてくれよな

 

 


店の人間が言っていたそうだ。

あぁ、私のことか と思った。
金の無い彼にあてがわれた金蔓が
まんまと惚れてしまった、
ただ それだけの話だったのだ。

馬鹿馬鹿しい。
チープなドラマの様な話じゃないか。
ここには感動的なラストシーンも
突然現れるヒーローもいやしないけれど。

 

 

ヤツは大概は放っておいてくれた。

そして時々思い出したように私を連れ出したり

友達を呼んで馬鹿な話をしたり

ごくたまに慰めのようなことを言ってくるのだった。

17歳の私にしたことを、その終わりを

ヤツなりに反省してくれていたのかもしれない。

 

 

例えば一週間で別れることが決まっているとしたら

ケンカしながら1週間無理やり過ごすより

キリのいいところで

楽しい思い出だけを持って別れる方がいい

 

 

ヤツの言葉だ。

だけど私には それが出来ない。

楽しい思い出だけじゃ

荷物としては重過ぎるのだ。

一歩も前へ進めない。

きっといつまでも引きずってしまう。

 

ずっと携帯を握りしめてしまう

鳴らないと知っていながら待ってしまう

街中で彼を探してしまう

そんな不毛な毎日が待っている

 

 

夢を見た。

彼が迎えにくる。

「酷いことを言って悪かった」

「全部やり直そう」

私は彼の車に乗り込む。

 

願望をこんなにもハッキリと

夢に見たのは初めてだった。

もう二度と信じられないくせに

夢の中の私はあっさりと許すのだ。

彼を信じて、その手を取るのだ。

それが悲しかった。

私は二度と彼を信じられないと

その夢に気付かされた事が

どうしようもなく悲しかったのだ。

 

 

彼が店の人間の友達でなかったら

 

私が身体を売る仕事さえしていなければ

 

何か別の出会い方をしていたら

 

 

それでもきっと道は違っていたのだろう。

どこで出会い どう知り合っても

私たちには行き止まりしかなかった。

 

たとえ行き止まりが待っていると知っても

足を止めることは出来なかったのだろう。

 

だから私たちは終わったのだ。