ユートピア 丈夫なココロが欲しい 痛いのはもう嫌なんだ

 

どの道へ進んでも

 

最後は 行き止まり

 

そういう道を

 

私たちは歩いていたのだ

 

 

 

 

 

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身体を売り続けることを
認めてくれる優しさなど要らなかった。

そんな仕事はするな と
怒ってくれる優しさが欲しかった


17歳の私を傷付けた男の家に
私はまた転がり込んだ。
逃げ込んだと言うべきだろうか。
17歳の私を心に飼ったまま
それでもその男への恋心は無く
私に無関心なその男なら
きっと理由も聞かず
置いてくれるだろうと思った。

そう、思ったのだけれど
意外にも怒られたのだ。

 

身体を売る仕事をしていたこと
なぜそんなことになったのかも
微に入り細に亘り聞かれたのだ。

なぜコイツが怒るのだろう。
付き合ってもいない
酷い振り方をしたコイツがなぜ。
未だに「妹のように」思ってでもいるのだろうか。
本当に妹とでも思っていたのだろうか。

そういえば17歳の頃
コイツに言われたことがあった。


ガキのくせに
愛のないセックスばっかしてんじゃねーよ


それならアンタが教えてくれんのか。
喉まで出かかって飲み込んだ言葉だ。

 

「愛のないセックス」のうちの一員が
偉そうに怒っていることが 何だか可笑しかった。
可笑しかった筈なのに、涙が出た。
こんな何でもない奴が怒ってくれるのに
なぜ彼は怒ってくれなかったのだろう。

 

彼にとって私は
❝何でもない女❞だったのだろうか。

 

 


金が無いって言うから紹介してやったのに
逃がさないようにしてくれよな

 

 


店の人間が言っていたそうだ。

あぁ、私のことか と思った。
金の無い彼にあてがわれた金蔓が
まんまと惚れてしまった、
ただ それだけの話だったのだ。

馬鹿馬鹿しい。
チープなドラマの様な話じゃないか。
ここには感動的なラストシーンも
突然現れるヒーローもいやしないけれど。

 

 

ヤツは大概は放っておいてくれた。

そして時々思い出したように私を連れ出したり

友達を呼んで馬鹿な話をしたり

ごくたまに慰めのようなことを言ってくるのだった。

17歳の私にしたことを、その終わりを

ヤツなりに反省してくれていたのかもしれない。

 

 

例えば一週間で別れることが決まっているとしたら

ケンカしながら1週間無理やり過ごすより

キリのいいところで

楽しい思い出だけを持って別れる方がいい

 

 

ヤツの言葉だ。

だけど私には それが出来ない。

楽しい思い出だけじゃ

荷物としては重過ぎるのだ。

一歩も前へ進めない。

きっといつまでも引きずってしまう。

 

ずっと携帯を握りしめてしまう

鳴らないと知っていながら待ってしまう

街中で彼を探してしまう

そんな不毛な毎日が待っている

 

 

夢を見た。

彼が迎えにくる。

「酷いことを言って悪かった」

「全部やり直そう」

私は彼の車に乗り込む。

 

願望をこんなにもハッキリと

夢に見たのは初めてだった。

もう二度と信じられないくせに

夢の中の私はあっさりと許すのだ。

彼を信じて、その手を取るのだ。

それが悲しかった。

私は二度と彼を信じられないと

その夢に気付かされた事が

どうしようもなく悲しかったのだ。

 

 

彼が店の人間の友達でなかったら

 

私が身体を売る仕事さえしていなければ

 

何か別の出会い方をしていたら

 

 

それでもきっと道は違っていたのだろう。

どこで出会い どう知り合っても

私たちには行き止まりしかなかった。

 

たとえ行き止まりが待っていると知っても

足を止めることは出来なかったのだろう。

 

だから私たちは終わったのだ。