汚れた机を僕は夜に片付けた 何かが変わるかな

ねえ「好き」って何だっけ?

 

思い出せないよ 思い出せないよ

 

     ―やつつけ仕事/椎名林檎

 

 

 

 

 

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20歳の頃の話だ。

その頃仲良くしていた子からご飯に誘われた。

いつも通り待ち合わせをしてファミレスへ行く。

そこで その子と彼の話を聞いた。

 

とても とても好きな人が出来た

一緒にいるとすごく楽しくて

毎日でも一緒にいたいくらい好き

たまに喧嘩もするけど

この人しかいないって思う

 

でもこの前

彼の元カノが彼に連絡してきて

妊娠してるから責任取ってって

 

別れて半年も経って今頃そんなこと言ってきて

そんなのズルいよね

それで彼が泣いて謝るんだ

ごめんね 俺のせいで ごめんねって

 

ねぇお願いだから行かないで

これは夢だよね?って

私も泣いて引き止めて

2人でめちゃめちゃ泣きまくって

でもダメだった

 

返してほしい

本当に返してほしい

 

そう言って彼女はまた涙を零した。

私は 何も言えなかった。

私には 泣いて引き止めたこと なんて無かったからだ。

 

いつも自分のプライドを優先して

どれだけ引き止めたくても、格好悪くて言えなかった。

 

だから

「これは夢だよね?」と泣いて引き止めた彼女を可愛いと思ったし

心底羨ましいとも 思ったのだった。

 

 

 

 

21歳の頃の話だ。

高校からの付き合いの子から 最近彼とうまくいっていないと相談された。

メールや会う回数も減って態度も素っ気ない。

電話をしてもすぐ切り上げようとするし

会おうとしても「疲れてるから」と言われる。

 

だからこれから彼の家に行くから

ついてきてほしい。

 

そんな状態で家の前で「来ちゃった」は反則だろう・・

と 思ったが、それをしようと思えるところを素直にすごいとも思った。

 

私はきっと怖くて行けないな、と言った。

彼女は「“好き”の度合いじゃない?」と言った。

 

 

そうか。

“好き”の度合いで

縋れるかどうかが決まるのか。

ならば私は

これまで“好き”だと思っていたけれど

本当に“好き”だったのは 自分だけだったのだろうか と思った。

 

17歳の時も

18歳の時も

19歳の時も

全部

自分の心を守るよりも相手を欲することを優先出来なかった私は

結局のところ自分が一番大事だったのだろうか。

 

 

結局彼女は彼とその日別れてしまったけれど

家まで行ってやるだけやったからか

とてもスッキリしているように見えた。

 

私はやれるだけやってきただろうか?

こんな風にいつまでも忘れられないのは

やれることがまだあるのに物分かりのいい振りをして

簡単に諦めてきたからではないだろうか。

 

 

 

2人の女の失恋は

私の心に滓のようなものを落としたのだった。

 

 

 

“ねぇ「好き」って何だっけ?”