セヴンスターの香り味わう如く季節を呼び起こす

 

恋と憧れと見栄

 

その区別を付けられないまま

 

「少女」の時代が過ぎる

 

そこには

 

幸せな恋など

 

用意されていないのだ

 

 

 

 

 

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16歳の秋
初めて出来た彼氏は
8つも年上のロクでもない男で
歌が下手なストリートミュージシャンだった。

 

“年上の彼氏がいる”ことは
私にとって自慢だった。
本当に恋をしていた訳ではない。
“年上のカレ”という憧れと
自慢したいという“見栄”
そして少しの“好き”という気持ち。
その程度だった。

 

24歳の彼は交通誘導のバイトをしていた。
当時は仕事をしている「大人」と思ったが
今考えると、いや考えなくても分かる、
まぁまぁなロクデナシだ。
やりたいことや夢を追っているが故のバイトでなく、
ただ何となく流れてきた先のバイトなのだ。

 

そんなどうしようもない彼でも
買い物に行ったり
ただその辺に座って話したり
彼の下手な歌を横で聞いたり
それなりに楽しくやれていた。

 

ただ16歳と24歳では
「恋愛」に対する感覚が
あまりにも違いすぎた。

 

16歳の私はセックスのセの字も知らず
キスもしたことがない子供だった。
見た目は大人っぽく思われていたが
中身は全く追い付いていない。
幾ら大人っぽく振舞っていても
大人の女と同じことなど出来はしない。

彼の求める関係と
私の求める関係のスピードが
全く噛み合っていなかった。

 

 


ある日
「部屋の掃除を手伝って」と言われ
彼の家に行った。
今なら使い古された誘い文句と分かる。
けれど当時はそんなことも知らず
本当に部屋の掃除をするつもりでいた。


家に入り少し話たところで押し倒された。

本当に驚いた時は声が出ないのだなと思った。
そして怖い時にも言葉は出ないのだと知った。

 

彼を押し退け鞄を引っ掴み
「じゃあね」と言って飛び出した。

 

自分の言った「じゃあね」が
ただの帰りの挨拶なのか
別れのつもりで言ったものか
自分でもよく分からなかった。

 

ひとつ分かったのは
私は彼を好きじゃなかったということだ。
全く好きじゃなかった訳じゃない。
ただ、“それほど”好きでもなかったのだ。
きっと彼の方だって同じだ。

 

私の気持ちを待てなかった彼も
許す気になれなかった私も
同じ程度の 好き だったのかもしれない。

 

 


気持ちで繋がれないのなら
身体だけ繋がっても意味がない。
怖い気持ちも確かにあったが
それよりも 何よりも
通り過ぎていくだけの男に
私に何も残らないような相手に
私の何一つもやりたくなかった。

 

初めの一歩を間違えたら
あとはもう転がり落ちるだけだ。
ロクデナシからロクデナシへと
人が変わっても中身は同じ。

 

身体だけなら楽だっただろうか。

 

人間が、血の詰まった ただの袋なら

 

気持ちが伴わず苦しむことも

 

涙を流すこともなかっただろうか。

 

 

 

17歳の時ほどではないが

 

未だにふとした瞬間に思い出す。

 

 

夜の入り口の空気と

 

まばらに点いたネオンの街を

 

泣きながら走った、青春を。