逃げたくはない曖昧を背中で飼い馴らして

 

道を絶たれてしまった者は

 

そこからどこへ行くのだろう

 

あった筈の道を奪った者には

 

どんな罰が待っているだろう

 

 

 

 

 

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18歳の頃 踏み躙ったもの。

怖いという理由で 無かったことにしたもの。

私の 子供の話だ。

 

 

馬鹿で浅はかな小娘だった。

まさか自分に限って、と思っていた。

妊娠が分かった時、ただ怖かった。

育てる自信がない

産んでも幸せにしてやれない

彼と結婚なんて出来ない

 

産みたくない

 

そう、思った。

 

 

母には「可哀想だけど堕ろしなさい」と言われた。

正直、ホッとした。最低だ。

 

同意書にサインを貰う為

彼に会って話をした。

彼は私の勝手な決断に怒り

「頑張れば何とかなるかもしれないじゃん」

と 言った。

何て頼もしい奴、と情けなくなった。

 

何とかする、何でもする

頑張るから結婚しよう

 

そう言って欲しかったのだ。

❝かもしれない❞なんて運任せではなく

自分が何とか❝する❞から、と

そう、言って欲しかったのだ。

 

 

手術の日、何も考えられなかった。

書類を出し、お金を払い、病衣に着替えた。

手術台へは歩いて行った。

点滴から麻酔が入る痛み

一瞬ボヤけた景色

その後気付いたのはベッドの上だった。

 

看護師の女性が点滴を抜きに来て言った。

 

「私達はこんなことをするために

 この仕事に就いたんじゃないの」

 

分かっている。

私だって自分の馬鹿さ加減が嫌になる。

情けなくて、泣ける。

 

「泣いたってどうしようもないでしょ」

 

看護師からの追い打ちだ。

けれどこの人は本当に仕事が好きなのだ。

命を守る仕事が

新しい命を産む手助けが

それなのに

命を奪う片棒を担がされるのだ。

申し訳ないと心から思った。

 

その日の夜

彼から電話で別れを告げられた。

私はそれを他人事のように聞いていた。

 

 

 

私は一生子供は作らない。

 

思っていた人生が変わってしまう恐怖と

準備が出来ていないという勝手な理由で

ある筈だった子供の人生を

無かったことにしたのだ。

 

「子供は?」

と聞かれる度 私は答える。

 

子供嫌いなんです。

自分の時間が無くなるので。

 

そうして嘘を吐き続ける事が

免罪になるなどと思ったことはない。

ただ 何かを課さないといけない気がしたのだ。

 

 

 

誰かの道を絶った罰は

 

一生嘘を吐き続けることだ。