「大人になんかなってないぜ、子供じゃなくなっただけだよね」

17歳。

私にとっては象徴的なものだ。

今でも忘れられない、17歳の日々。

良いことも、悪いことも、そのすべてが私を作っていた。

自分の気持ちだけが大切だった。

自分は主人公だと思っていた。

自分が望めば、何でも手に入るとさえ思っていた。

私は17歳だった。

 毎日、退屈だった。

刺激が欲しい、変化が欲しい、特別な何かが欲しい。

 それを叶えてくれる何かを、誰かを、毎日探していた。

碌に恋愛もしたことがない癖に経験豊富な振りをしたり

自分は周りの子とは違う、大人なんだと考えたり

誰も信用なんかしないって尖ってみたり

そのうち学校へも行かなくなって悪い友達を作ったり

分かりやすく道を外れた、テンプレート通りのどこにでもいる17歳。

まるでブロイラーの鶏だ。

特別なものなど持っていなかった。

ただ一つ、「17歳」を除いて。

17歳というものは「17歳である」ということただそれだけで価値がある。

いつかは失われるものなのに、それが永遠であると信じて疑わない輝き。

❝少女❞ と ❝女❞ のちょうど境界に立っている、危うい時期。

その頼りなさから発せられる言いようのない魅力。

17歳は「17歳である」ということが美しいのだ。

17歳の私の価値は「17歳である」ということだけだった。

桜が咲き、雪が降るまでのことだ。

8ヶ月。

何度数えてみても、たったの8ヶ月だった。

その短い時間を、私は「17歳」を抱えて駆け抜けた。

その道のりで、沢山のものを落としてしまった。

抱えた「17歳」から少しずつ色んなものが零れ落ち、二度と戻らないものまで失くしてしまった。

ずっと後になってから「自分を大切にする」ことの意味に気付いた。

もしその時に気付いていたら？

きっと気付いていても同じように落っことしたに違いない。

何がいけなかったのか？

誰がいけなかったのか？

考えても仕方がないと今はわかる。

けれど17歳の私にはそんなことは分からなかった。

考えて考えて答えが出せたらやり直せるみたいに、ずっと考えていた。

同じ風の香り、同じ温度。

自分がつけていた香水の香り。

彼がつけていた香水の香り。

刺すような冷たい空気と澄んだ星空。

夏の暑い夜と街の喧騒。

誰もいない朝方の道路。

窓を開けて走るシーサイドライン。

知らない街のゲームセンター。

煙草の香り。

カーテンの閉まった部屋。

昼でも薄暗かった部屋。

全部が特別に思えた。

私だけが感じる特別な瞬間だと思った。

私は、17歳だった。